伊豆高原の桜前線は、3月に入って予想外の寒さに停滞していた。 晦日になってまるで手のひらを返した様に汗ばむほどの真夏日となり、花吹雪では日本の色棟前の染井吉野と森の園の小彼岸桜が一気に満開となった。こんな日に滞在できるとはなんとも幸運である。
伊豆高原は冬暖かく、早咲きの桜で有名な「河津桜」も例年いち早く開花することが多い。花の少ない真冬にパッとピンクの花を咲かせてくれると、気持ちも明るくなるというものだ。
今年は1月中旬から鮮やかな一重の花で冬場を彩ってくれた。湯に浸かりながらのお花見はなんとも贅沢なひとときである。
彼岸の頃に咲く小彼岸桜は小ぶりで一重の桜。染井吉野よりは色が濃く低木であるため枝に咲く花を近くに見る事ができる。派手さはないが細い枝にも密集して花をつけ、風に揺れる姿がなんとも可愛らしい桜。
今年は彼岸を過ぎても花冷えの冷たい雨が続き、前日まで蕾を固くしていた。花吹雪の森の園には小彼岸桜の並木があり、お花見散策が楽しめる。
伊豆高原駅前の大寒桜、桜並木の染井吉野の桜のトンネルも見事だ。
桜と言えば、染井吉野のことを指すと言ってもいいくらい有名な染井吉野は日本全国各地に植えられており、気象庁が桜の開花を判断する「標本木」としても知られている。
花弁は一重で薄紅色で咲き、満開を迎える頃に白く変化していくさまが移ろう女心にも詠われる。樹高は高く見上げるほどになり、横に広く広がった傘のような形に育つ。染井吉野は美しさと華やかさを併せ持ち、美の女神「此花咲耶姫」が宿るとも言われる。
花吹雪では日本の色棟前の大きな染井吉野は枝を広げて、薄桃色の花を満開にしている。春の暖かさを待ちながら蕾を膨らませて一重の花を一気に咲かせた。昼間の姿は清楚で可憐。夜桜は豹変し、妖艶さを持って夜空に浮かび上がる様な姿をしている。
満開の桜が風にはらはらと舞う様を花吹雪という。
桜満開の森の園は桜だけでなく黒文字も黄色い小さな花を咲かせていた。