まだまだ花冷えのする季節は、温かい日本の甘味が恋しくなる。花吹雪の茶店、雲上亭・緑蔭亭では、なんと言ってもほっこりとした甘さの「ぜんざい」が一番人気だと言う。
いずれも小豆を砂糖で煮たもので材料は同じ。では、呼び名の違いだけなのかというとそうでもないようだ。
関西では「ぜんざい」は粒餡仕込み、「おしるこ」は濾し餡を使ったお汁のある甘味のことをいい、関東では汁気のあるものを「おしるこ(お汁粉)」と言い、こし餡で作ったものを「御前汁粉」、粒餡で作ったものを「田舎汁粉」などと言うそうだ。「ぜんざい」は焼き餅や白玉に餡子を添えた汁気のない甘味を指す。
「ぜんざい」発祥の地は島根県の出雲と言われている。その理由は日本古来の八百万の神様が出雲大社に集まる神在月(旧暦10月)の神事で振る舞われていたのが「神在餅(じんざいもち)」で、これが変化して「ぜんざい」になったと言う説。
また、はじめて「ぜんざい」を食べた和尚さんがあまりの美味しさに「善き哉」と言ったとか。それが「善哉(ぜんざい)」となったという説。
あるいは、正月に鏡割りした餅を焼いて小豆汁にして食べたことから、神前に備えた餅はそもそも「善哉」であることから「ぜんざい」となったと言う説。
いずれにしても小豆を甘く煮たもので美味しく、有難い甘味であることは間違いないようだ。感謝して味わいたい。
江戸時代の酒のつまみ「すすり団子」が起源と言われている。甘味ではなく塩で味つけた小豆汁で米の団子を煮たものだそうで、上から砂糖をかけて食べるものだったとか。日本酒のつまみに「大福」と聞いて驚きを隠せないが、意外と相性が良く歴史も長い日本酒の嗜み方なのかもしれない。
花吹雪のスタッフが茶店で人気はダントツで温かい「ぜんざい」だというが、中には冬でも冷たい「冷やしクリームせんざい」がいいという方もいるのだそう。こんがりと香ばしい焼き餅は小腹がいた時に丁度いい。
抹茶、ほうじ茶、緑茶、コーヒーとセットで頂くことができる。大きな抹茶茶碗で頂くとより味わい深い気がしてくる。
「ぜんざい」の美味しさは、なんと言っても小豆を上手に煮ることができるかどうかにかかっているのではないか。これはなかなかハードルが高い。
まずは渋抜き。小豆は浸水がいらないのですぐに調理できるが、アクやえぐみを取りまろやかで美味しい煮小豆を作りたいものだ。
料理人のように鍋でじっくり小豆と対決するのはちょっと自信がない。炊飯器のお粥モードがいいと聞き試してみたいと思う。さて、出来栄えはいかに。
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