冷おろしといただく夏の名残と秋の旬

暑いかった夏もようやく鎮まり、秋がかけ足で来た。今年の夏は「命に関わるほどの暑さ」と言われるほど、各地の最高気温を更新した。涼を求めて行った高原の避暑地も、エアコンがないので返って猛暑となったところもあるほど。


涼やかな秋の風に乗って虫たちの声が聞こえてくる晩には、冷下ろしで旬をいただこう。季節の移り変わりを献立でも味わいたい。



先付:巨峰と春菊の菊花酢和え、炙り帆立


今宵は限定酒、「開運」純米冷おろし。初秋、料理長イチオシの静岡県の地酒。秋を告げるお酒だとのこと。



「冷おろし」は冬に絞った新酒を劣化にないように火を入れ加熱殺菌して大桶に貯蔵。秋になって2回目の火入れを行わず、「冷や」のまま大桶から樽に下ろして出荷したことからこの名がついたそう。絞ったばかりの新酒はまだ熟成していないので荒さがあるが、一夏越して味わいが深くなるのだという。



八寸:胡麻麩と白瓜の胡麻酢和え、炙り〆かますの棒寿司、静岡鶏の松風、地物深海赤海老の老酒漬け、鮑の味噌炊き、銀杏の素揚げ、いちょう丸十


料理に一粒入っただけでも秋を思わせる銀杏。いちょう丸十が添えられて色づく紅葉を思わせる。 ところで、「銀杏」と書いて「ぎんなん」とも「いちょう」とも読む。ダブルネームの「銀杏」は、中生代(2億5千万年前〜6千万年前)から存在していた植物で、生きた化石とも言われるそうだ。収穫から食べるに至るまでにはなかなか苦難を伴うが、滋養強壮に良いとされるのはそんな背景にもあるのかもしれない。



御造:金目鯛の焼霜造り、旬の地魚・黒鯛、真鯛


鯛3種の食べ比べとなった今日の御造。なんとも贅沢である。柔らかく、上品な旨味の金目鯛。香ばしく焼いた皮と脂が美味。濃厚な味わいの黒鯛はワイルドな感じ。真鯛は淡白で甘味のある味わい。こんな楽しみ方も伊東港が近いここならでは。



煮物:契約農家直送 丸茄子の揚げ煮、揚げ海老真薯、薬味のせ


その手で来たか!と唸らせる一品、煮物。今回は関西風の出汁で仕上げてあった。秋茄子の美味さが引き立つ。



中猪口:洋梨と天城山葵のソルベ


季節の果物に天城の生山葵を効かせた大人のソルベ。洋梨の香りと甘さの次に来る山葵の香りとピリ感。



焼物:静岡牛「葵」の和製ロースト、農家直送ズッキーニたれ、舞茸、松の実


濃厚でコクのあるズッキーニのたれが、柔らかく品のある旨味の静岡牛をさらに引き立てる。冷やおろしが進む一品。



御飯・留椀・香の物:牡蠣とむかごの炊き込み、丸十の摺り流し、胡瓜の黒文字漬け、水茄子漬け、汐吹昆布


秋らしいご飯と汁物。



料理屋菓子:自家製栗蒸し羊羹


宿の敷地内に茶店ができ、甘味を提供。自家製のデザートは別腹でいただく。



今年は中秋の名月と満月が重なる年。うさぎの餅つきも賑やかになりそうだ。



掛け流し温泉を満喫した翌朝は、朝食前にウォーキングはいかがか。伊豆高原「海と森の散歩道」は花吹雪から対島川に沿って海を見ながら八幡野港へ続く散策コース。ちょうど日の出から30分の頃。晴れていれば絶景。




大淀、小淀と呼ばれる潮溜まり。地元の子どもたちは9月までここで泳ぐのだとか?溶岩が海に流れ、急激に冷やされたためにできた地形だそうだ。



岩壁を見下ろしながら吊り橋を渡りと森の中へ。




うるしの落ち葉は、秋の足音。





木立の合間から見る、朝のサンロード。







花吹雪の周りにも小さい秋が。