年末押し迫った暮れだというのに、欝金色や真朱に染まった花吹雪の「森の園」。12月中旬から今年1番の大寒波が東海から北日本かけて到来した後、クリスマス大寒波が各地に大雪を降らせているニュースというのはどこか遠い国の話のよう。伊豆高原のある伊東市は真夏の平均気温が26度、真冬が7度。冬の最低気温が2度以下になることはほとんどないという。
冬でも温暖な伊豆半島の沿岸は、黒潮の暖流に囲まれて最低気温が高く、寒波ニュースの最中にも零度にはならない。伊豆スカイラインや箱根スカイライン、天城山などの峠を早朝通らなければ路面の凍結なども少ない。
宿泊棟をつなぐ見晴らし橋も紅葉真っ盛り。「朝、雪かきがないなんて、憧れる」と雪国の友人が言う。伊豆高原に信州や東北からの移住が多いというのも頷ける。
暖かいと言っても冬は冬。ゆっくりと掛け流し温泉に浸かって疲れを癒し、温まりたい。花吹雪の7つの貸切風呂は100%掛け流し。100%掛け流し温泉とは、加水、加温なしで常に新しい温泉が湯船に注ぎ込まれ、お湯は戻さない。湯量が豊かで縁から湯が溢れ出している。特に足元から湧き出るお湯は地球そのものの力を感じるよう。戸外が冷えるこの季節、露天風呂は湯加減もちょうど良く森を眺めながら浸かる湯は自然との一体感を味わえて、格別。極楽、極楽。
紅葉した葉は葉緑体が減り光合成が行われなくなりやがて散ってゆく。伊豆高原は常緑照葉樹も多く、冬でも深緑の葉が茂る樹林に覆われていて、部屋の窓からは豊かな緑を楽しむことができる。そして一月も終わりになればもう桜。部屋の窓からも寒桜の花見。
(写真は前年の1月末のもの)
先付:炙り帆立と摺りおろし林檎酢
旨味がぎゅっと凝縮したような炙り帆立に爽やかな甘味とフルーティな淡い酸味の摺りおろし林檎がマリネのよう。
八寸:菜花の白和え梅花人参、和三盆仕立ての栗きんとん、燻鮭の椿寿司、自家製唐墨梅花大根、海老の松風、千社唐の西京漬、黒豆
料理長は白和えが得意。白い衣を纏う菜の花はまだ冬に差し掛からない暖かな伊豆高原から、やがて来る「春」を思い慕うよう。
目で楽しめる日本の料理で季節を更に堪能。ピンと張ったような夜の空気に、澄んだ夜空。浴衣に丹前姿で食事処からお部屋へ、貸切風呂へ。星の数がこんなにもあったのかと驚き歩くほろ酔いのうさぎ谷。暖かい伊豆高原で春待ちステイはいかが。
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