森の木漏れ日がこころなし柔らかく感じる。仰ぎ見る空の青さは夏のそれとは違い、高く、澄み渡る。蝉の声はもうしない。少し遅めのお昼をいただきながら、雲上亭から眺める花吹雪の森。
和食のお料理は、味を楽しむ以外に季節を楽しめる。「目で見る」「味わう」「香りを嗅ぐ」「舌触り」や「のど越し」「歯ごたえ」「音」。四季だけでなくその移ろいを五感で感じ取る愉しみ。過ぎゆく季節を惜しみ、到来する季節をいち早く感じ取る。
八寸:白瓜と胡麻麩の胡麻酢和え、炙り〆かますの棒寿司、静岡県産美味鶏の松風、銀杏、いちょう丸十、目光の南蛮漬け
「お料理は季節の先取り。秋は特に「香」を意識して献立しました。香ばしさが素材の味の深みを引き出してくれます。季節は移りゆくもので「“今日から秋”とはならないところが難しい。それでも“秋をお知らせする”という気持ちで支度しました」と料理長。
「9月1日から底引き網が解禁となったので、この時期ならではの地魚です。今日は南蛮漬けにしてみました」
深水200mから600mの深い海で採れるメヒカリは夏から秋にかけて旨味が増すという。やや小ぶりの白身の魚で身も骨も柔らかく天ぷらや南蛮漬け、塩焼きにしていただく。
御造:太刀魚、魴鮄
年間100種類以上の魚が水揚げされる伊東。夏から秋にかけて旬を迎える太刀魚は焼くと香ばしく、脂がありふっくらとした美味しさがある。いかつい姿をした魴鮄はお刺身、唐揚げ、塩焼き、何にしても美味しい。お刺身は甘味があり濃厚な味わい。
煮物:契約農家直送 丸茄子の揚げ煮・海老真薯・春菊餡掛け・白髪葱と茗荷・黄柚子
「花吹雪のお料理には、小布施の契約農家から直送される野菜を使っています。今日は小布施丸茄子を揚げ煮にしました。海老真薯は40年前から献立に入っていますが、人気のひとしなです」
小布施丸茄子は地元小布施町でも愛され続けている伝統野菜のひとつ。漬物、焼き物、揚げ物、煮物とさまざまな料理で親しまれている。北信濃の郷土食「おやき」には欠かせない。果肉がしまって煮崩れしにくいと言われ、ほのかに甘い特有の風味。
御飯:天然きのこおこわ
なめこ、さわもだし、むきたけ
「耳慣れない名前のきのこですが、旨味があって美味しいんですよ」
“なめこ”は主にブナの倒木や切り株に群生する。”さわもだし”と”むきたけ”はブナ、ナラ、クヌギなどの倒木や切り株に群生する。山の味、森の香りを楽しめる秋のおこわです。
地のもの、旬のものを味わいながら秋を堪能して湯に浸かる。100%掛け流しの温泉は7つの貸切風呂の中から選ぶことができる。
7つの貸切温泉→https://www.hanafubuki.co.jp/onsen/
日帰り7つの貸切風呂→https://www.hanafubuki.co.jp/topics/2022-1005/
万葉集の歌が始まりと言われている秋の七草。春の七草は七草粥にして無病息災を祈願するものですが、秋の七草である萩、尾花、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗は、花を愛でるものだそう。花吹雪の敷地内にも秋を告げる可愛らしい花を咲かせています。
萩:秋の風情を感じる萩の花。秋の七草と言えば赤色の萩の花を思い浮かべます。
藤袴
常盤色の中に辛子色が混じって秋風に揺れる。桜紅葉はいちはやく色づいて朱へと変わって行く。伊豆高原の秋は、いつもゆっくりと歩み来る。
灯台躑躅
漆
桜