ツクツクボウシの声が聞こえると、移りゆく季節を感じる初秋。今年は、観測史上最短の梅雨で、国内でも6月には40度を記録した地域もあるほどの炎夏だった。9月に入ってからは、蒸し暑さが堪える猛暑日も過ぎ去り、やれやれ朝夕過ごしやすくなった。森林を吹き抜ける緑の匂い酷熱を乗り切った身体を労わるように都会を抜け出そう。
常に新しい源泉が流れ込む掛け流し湯は、温泉好きにはとても魅力的。数ある温泉の中でも加水、加温、循環をしていない源泉掛け流しは意外と少ない。花吹雪の7つの貸切風呂は、森の緑に囲まれながらお湯を堪能。湧き出た温泉の成分を身体に受けてまずはリフレッシュ。
本当の夏バテは涼風の立つ頃に来るという。なんとなく体が重い、眠れないなど疲れが取れないまま日が経つにつれてバランスも崩しがちに。そんな時は自然の恵みをふんだんに使った手料理がカラダの中から癒してくれる。素材選びも身体を思ってのこと。料理長の気遣いが染み入るよう。
先付 巨峰と春菊の菊花酢、炙りホタテ、占地
ポリフェノールが体に良いのはご存知のことと思う。抗酸化作用で老化防止、発がん防止の効果もあるとか。さらにストレスへの耐性、運動機能の向上も期待できるそう。赤ワインが持て囃されるのも頷ける。
八寸 山海の幸をひとくちずつ。季節を感じさせる贅沢な一品にお酒も進む。
白瓜と粟麩の胡麻酢和え、炙り〆かますの棒寿司、鮑の味噌炊き、静岡県産美味鶏の松風、伊豆産本海老の老酒漬け、銀杏、いちょう丸十
伊豆では海女漁が古くから行われ、鮑、サザエ、トコブシ、天草などを素潜りで獲る。夏が旬の巻き貝、鮑。縄文時代から食され、遺跡に出土しているという。海深く潜って獲る美味しくて希少な鮑は、伊勢神宮への献上品であったそう。あわびは薬膳にも用いられ、体内の熱を取り除き、慢性疲労や不眠にも効果があるとされる。
「秋カマスは嫁に食わすな」という諺があるのだとか。秋茄子、秋刀魚と並んで「美味しい」カマスは秋刀魚より少し早い初秋に脂が乗ってくる。炙り〆にしたカマスは香ばしく、酢飯とよく合う。
御造 金眼鯛の焼霜造り、ほうぼう、真烏賊
80種類あると言われる烏賊の中でも夏から秋にかけて美味しい「スルメイカ」のことを地方によって「真烏賊」「夏烏賊」と呼ぶ。高タンパク、低カロリーで、魚の2倍ものタウリンを含む「真烏賊」は、疲労回復、免疫機能維持に効果を見るとのこと。冷え性や貧血、肌荒れに悩む女性に薬膳としての効果も期待できるそう。
煮物 契約農家直送 丸茄子の揚げ煮、海老真薯、春菊餡掛け 白髪葱と茗荷 柚子
皮ごと頂きたい秋茄子。ふっくらとした果肉に出汁の効いた餡がよく合う。
キャラクターのように可愛らしい名前の「ナスニン」とは、茄子の美しい紫色の皮に豊富に含まれている天然色素のこと。ポリフェノールの一種で茄子に含まれるものを「ナスニン」という。赤紫蘇やブルーペリー同様に目の疲れを癒し免疫力アップやアンチエイジングなどの美容効果もあるそう。
伊豆高原産すももと山葵のソルベ
静岡牛「葵」の炭火焼き藁の燻香仕立て、揚げ針牛蒡、菊花、焼目寄せ丸十
栄養素を語るまでもなく、力がでそうな美味しいお肉。柔らかい身と良い香りが食欲を蘇らせてくれる。エネルギー代謝に欠かせないビタミンB群、良質のタンパク質と脂質は美容にも欠かせない。
御飯・留椀・香の物
天然きのこは味も香りも格別。ほとんど一般には流通しないので希少な花吹雪の「天然きのこおこわ」はこの季節だけ。
生薬としての歴史は古く紀元前3世紀とも言われているきのこ。その薬理効果は漢方、薬膳に限らず様々な健康価値が評価されている。最近では「腸活」とか「菌活」と整腸効果に人気があるよう。きのこが天然サプリメントと言われるのは、肝臓で活躍するアミノ酸「オルニチン」の働きが疲労回復に貢献していることに由来する。
伊豆、天城の山の幸、伊東の海の幸を頂き、豊かな気持ちになってくる。美味しいものには人を幸せにする力がありますね。