八重桜が見ごろを迎えている。幾重にも花弁を重ねてふんわりとした姿が可愛らしい。 ぽってり詰まって咲くことから牡丹桜と呼ばれることも。
伊豆高原では、染井吉野の散り際から咲き始め、4月中旬から5月にかけて満開を迎える。
早咲きの桜たちは、勢いよく葉を伸ばし、森は明るく、鮮やかな緑のグラデーションになっている。命の力強さ、木々の勢いが感じられる。
今宵の献立には、春告魚と芽吹いた山菜がふんだんにあしらわれ、料理長によるシンフォニアが繰り広げられていく。
先付:煮蛤とこごみと筍の湯葉かけ 針海苔
蛤も春告魚のひとつだそう。美味しい苦み山菜とともに
八寸:金目鯛の昆布締め粽寿司、鯛子寄せ・明日葉新芽・木耳、静岡県産鰻の八幡巻き、伊豆沖の目光の南蛮漬け、鮑の味噌炊き、空豆の艶煮
日本酒のおつまみには最高の八寸は、伊東の海と天城の幸を少しずつ盛った贅沢なお皿。
粽寿司は大正時代に老舗「有職」で生まれたそうで、お箸を使わずに手軽に食べられるとして観劇やお花見などに重宝されたのだとか。縢りを解いて笹の葉の清涼感のある香りを楽しみながらいただく。
御造:初鰹の土佐造り・自家製ぽん酢水晶掛け、金目鯛、みる貝
「春告魚」といえば一般的にはニシンのことを指すが、地域によってはメバル、サクラマス、イサダ、イカナゴなども「春告魚」と呼ぶこともあるそう。もちろん初鰹も春を告げる魚。旬の時期の魚は脂がのっていて、ほかの時期よりも美味しいといわれることが多い。春の時期になったら地域の春告魚を食べてみたい。
煮物:めばるのオランダ煮・山独活、ベビーコーン、木の芽餡掛け
春告魚めばる。淡白なお魚で煮付けや唐揚げでいただくことが多いでしょうか。オランダ煮とは江戸時代に長崎から全国へ広がった料理法で西洋風という意味だそう。淡白なめばるが、こっくりとした旨味に。
中猪口:裏山で採れた紅甘夏と山葵のソルベ
焼物:静岡牛「葵」のサーロイン、揚げ牛蒡、揚げ行者にんにく、干無花果
特製のタレ、伊豆塩でも山葵でいただいても美味しい柔らかい静岡のブランド牛
御飯:天城の山葵田で育った紅姫あまごの炊き込み
留椀:新玉葱の摺流し
香の物:胡瓜の黒文字漬け、長芋のたまり漬け、汐吹き昆布
紅姫あまごは天城の清流で育つ春告魚。狩野川の最上流のみに棲み「清流の女王」の名もあるほどの貴重な川魚。
料理屋菓子:自家製黒胡麻葛餅
美味しいお酒と季節の料理を堪能した後は、掛け流し温泉と森に囲まれた宿泊棟での寛ぎ。今宵は見晴橋を渡った宿泊棟「日本の色棟」でゆっくり過ごす。
窓の外は森の奥深くまで続く緑のグラデーション
さて、どのお風呂に入ろうか。黒文字、鄙の湯、サンパヤテレケ。7つの貸切風呂は一晩では制覇できないかな。