和風オーベルジュで過ごす年初め

城ヶ崎は風もなく温かな2020年のお正月。豊かな時の流れに感謝しつつ迎えた新年。今年もどうぞよろしくお願いしますと感謝の意を込めて、陽が射し仕込んできた森を眺める。

クラブハウスでの遅めの朝食は「おせち」

元旦から3日までのみの特別料理として朝は「お屠蘇」と「おせち」。これを目当てに年明けはここに決めたと言ってもいい。和風オーベルジュと表現したくなる丹精込められた品々。

朱塗りの器に盛られた料理はひとつひとつ手をかけて仕上げられたのが分かる。味わいながら、いつもに増してゆっくりと流れゆく時の流れとともに楽しむ。
「おせち」は季節の変わり目の意味だそう。神様に収穫を感謝する風習「節供」が起源だと言う「おせち」にはその一品一品に意味があり、新年を祝いながら頂く。



御節料理はすでに平安時代にも

平安時代、暦の上で節目にあたる日を「節会」(せちえ)と言って神様にお供えをして宮中で宴を催したのが始まり。節会のお料理を「御節共」(おせちく)と呼んでいた。

季節の節目である「元旦」に海の幸、山の幸を豊富に盛り込んだ「御節」の語源となったということ。これが、江戸時代になって庶民に受け入れられて行き日本の習慣となった。



「御節料理」はかまどの神様を休めるために作り置き料理が中心。家の繁栄を願って縁起物が用いられる。

重箱に詰めれば幸が重なる?

保存に便利だけでなく、重箱には素敵な意味が込められていて「めでたさ」が重なる、海・山の幸が重なることで「幸」が重なる、「福」が重なるとして重箱に詰めたという謂れ。縁起を担ぎ、5種・7種・9種の吉数で詰め、関西、関東、地方それぞれの違いはあるようだが、詰める料理も重ごとに決まっているのだそう。



壱の重:1番上になる壱の重には、祝い肴
・数の子:子孫繁栄
・田作り:「五万米」(ごまめ)とも言い、豊作祈願
・ごぼう:根を張り代々続く
・紅白かまぼこ:半円形で日の出を表す
・伊達巻:巻物は書物を表し知識・文化の向上を願う
・昆布巻:「喜ぶ」の意
・栗金団:蓄財・金運



弍の重:縁起のいい海の幸
・鰤:成長するに従って名前が変わる出世魚
・鯛:「めでたい」魚として祝膳に用いられる魚
・海老:長寿を願って、腰が曲がるまで



参の重:家族円満を願い、山の幸のお煮しめ
・蓮根:将来の見通しがきくように
・里芋、くわい:子孫繁栄を願って
・ごぼう:根を深く張って家系が代々続くよう



与の重:酢の物
・紅白なます:祝いの水引
五の重:福を詰める場所として空にしておく


▪︎祝い箸・両口箸・家内喜箸

末広がりの八寸と決まっている「祝い箸」は、箸の両端が細くなっていることから「両口箸」、祝いの席で箸が折れるのを嫌って丈夫な「柳」で作ったところから「家内喜箸」(やなぎばし)とも呼ばれるのだそう。両端が細くなっているのは、片方が神様、片方は人が使うとして神様と食事を共にするという意味で祝いの席で使う。



あえて呼びたい、和風オーベルジュ

ホテルの「おせち」を頼むことはあっても、最近では家庭で「おせち」を楽しむことも少なくなってきたのではないだろうかと思う。
実家の母は元気な頃、大晦日は朝から台所で仁王立ちして監督。祖母から伝わる「おせち」の煮物を朝から煮付けをするのは私。たけのこから始まって、最後は椎茸をツヤツヤに煮上げるのだが、1日仕事となる。夕方にはフラフラになったのを思い出す。

今年は「おせち」付の宿で過ごす新年はどうか。と相方に持ちかけて花吹雪で過ごすお正月となった。お部屋は日本の色棟の「赤」。一言で「赤」と言っても赤系の日本伝統色は96色あるのだとか。平安時代は高貴な方しか身につけることのできない特別色でもあったそう。




年賀状の返事など書きながら過ごす、なんとも優雅に始まった2020年の新年。今年も良い年にしたいもの。手をかけた季節料理も、掛け流しの7つの家族風呂も、お部屋もどれがメインでも満足のゆく別荘宿。“泊まらずに料理だけ堪能して帰る”こともできるのだから、伊豆高原の和風オーベルジュと呼んでも良いのではないかしら…。