桜を愛した平安の歌人、西行法師の名前がついたお部屋は森に面して広く開口した窓が素敵。こじんまりとしたお一人さま用のサンクチュアリといっても過言ではないかも。一員として迎え入れられたよう。
西行は生涯でおよそ2090種の歌を残し、そのうち230種が桜を読んだものだそう。
「願わくば花の下にて春死なむその如月の望月の頃」 西行
有名なこの歌の通りに生涯を閉じた西行。桜の歌人と言われる所以。
森に面した広い窓にはちょっとしたマジックが。
どうやって障子を閉めるのかというと。
こんなふうに隠されているのもこのお部屋の魅力。
お部屋のお向かいには、掛け流しの湯が2つ。
今日は少し早めの到着。夕食にはまだ間がある。
さっと湯を浴び、ひとりうたた寝と決め込む。
春の香りと彩り。この時期だけの桜懐石のお夕飯。
木の芽酢が透けて美しい先付け
小鳥の囀りが聞こえて来そうな八寸。
今日のお酒は一見、いちごミルクのような。いえいえ若い杜氏さんが精魂込めて作ったお酒。ちょっと酸っぱくて、微発泡。淡い恋心のようなそんな感じもします。
御造りは赤いか、大紋ハタ、透き通った山葵水晶を抱いて桜葉に包まった金目鯛の桜葉〆。
穴子の飛竜頭・道明寺麩
菜の花をあしらった百合根のたれが一層春らしい黒毛和牛。
この時期だけの桜おこわ。お椀は浅蜊の真薯
和三盆のわらび餅
「風さそふ花のゆくへは知らねども惜しむ心は身にとまりけり」西行