鄙の湯の後、若鶯と花見酒

熱海は梅と桜の共演。今年は例年にない暖冬のおかげで梅と桜が同時に咲き、暖かい伊豆を一層にぎやかにしたもよう。駅前の桜はもう若葉が出て、春は駆け足で走り去るつもり。もう少しゆっくりしてくれてもいいのに・・・。
熱海駅から伊豆高原駅まで踊り子号でおよそ40分。常宿の桜も満開を迎えているだろうか。


今年は満開のウェルカム桜。今回の滞在も気持ち良く楽しめそう。



早速、掛け流しの貸切風呂で身体とこころを癒すとしようか。
湯船から桜が望める鄙の湯。



湯船に手足を伸ばすと、じわっと染み込むような優しくやわらかなお湯。思わずため息がひとつ。外気の温度のおかげもあって湯加減がほどよい感じ。湯口からとめどなく注ぎ込む豊かなお湯は、100%源泉掛け流し。天然の温泉にそのまま身体を預けると、ゆっくり、じんわりとほぐれていく。



鄙の湯から笹の垣根越しに見える小さな桜。メジロが蜜を吸うために花を啄ばんでいる。木々の木漏れ日とそよぐ春の風。なんともいい気持ち。



春告鳥が森のどこかで鳴いているけれど、若鶯のよう。だまだへたくそな囀り。 鶯はとても用心深いそうで、声はすれどもその姿は見えない。鳴き声の「ホーホケキョ」は縄張りを見張る雄鳥の声で「ここは俺の縄張りだぞ」という宣言と雌に対して「縄張り内危険なし」の合図でもあるのだとか。



若鶯も歌が上手くなる頃には素敵な伴侶に出会うのだろうか..。花見露天はなんとも優雅な気持ちになれるもの。



春の訪れを感じながら今夜のご馳走を楽しむとしようか。



八寸:燻鮭と株の椿寿司・自家製唐墨大根・海老とすり身の松風・菜花の辛子和えと氷頭なます・梅花人参・静岡県さん雉の岩塩焼き山葵のせ・赤もくの水晶寄せ・丹波黒豆


料理長が勧めてくれた希少酒は「十四代」槽垂れ。希少酒の代名詞とも言える日本酒にお目にかかれるとは。醪の風味を残した濃醇な味わい、華やかな香りが広がってキレがいい。
特別な日にこそ頂きたい、そんなお酒ですね。



地魚との相性も抜群。脂ののった魚に負けないまろやかな甘み。



お造り:伊東産金目鯛の焼霜造りと鰆、活車海老の洗い


蓋物:契約農家直送里芋饅頭銀杏入り 鱶鰭餡掛け


焼物:寒鰤の塩焼き


穴子の炊き込みご飯


翌日は河津まで足を伸ばして河津桜見物としようか。余寒の風がまだ少し残るかも。


河津までは電車で30分。お昼前には十分到着できる。お花見は日本の伝統文化と言ってもいい。花見の始まりは奈良時代とも言われているそう。その頃は梅が人気だったとか。平安時代になってから、桜の人気が上昇して花見と言えば桜になったという説もあるよう。和歌集を開いてみるのも面白い。



「久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ」 紀友則



散る花よりも騒がしいこの頃、こころ静かに花を愛ででいたいと思う、うす桃色の春霞。