暖かな日差しに誘われて森の散策に。
冬の森は耳で楽しめるのだそう。足下に敷き詰められた落ち葉、カサカサ、コソコソ。地面の柔らかさを感じる落ち葉踏みは靴の底から大地の優しさが伝わるよう。
風に吹かれてさざめく森の木々。さらさら、さわさわ。 枝の間から見える青空。野鳥の囀りながら飛んでいく。伊豆は暖かいから、渡り鳥の越冬かしら。
今年は暖冬と言われ、河津桜も蕾がほころんで、ちらほらと可愛らしい花を咲かせている。合間からかすかに三味線の音。チントンシャン、チントンテン。小唄のお稽古。東京からお師匠さんが見えて毎月お稽古があると聞いていたから、今日はちょっと見学させていただこうか。
音に誘われて森の園からうさぎ棟を抜ける。見晴らし橋を渡って森の小径へ。明日はおさらい会があるそうで、仕上げのお稽古なのだそう。
風雅な三味線の音色とゆったりとした曲調ばかりかと思ったら、そうではないのです。お稽古の合間にお師匠さんに伺ってみる。
春日とよ浜栄実 先生
「江戸小唄」は清元お葉が創始と言われ、江戸時代末期から明治、大正、昭和と発展した三味線音楽。邦楽は耳慣れないから敷居が高いと感じてしまうけれど、琴や三味線の音が普段から普通に聞こえてきた時代には、流行りの歌を三味線を伴奏に口ずさむ感じだった。と春日とよ浜栄実 先生。
端唄のテンポを早くして、短く、すっきりと粋な味わいにしたのが「江戸小唄」。花柳界の御座敷という特殊な世界で成長した小唄は、当時、四畳半のお座敷での演奏が多く、唄一人、三味線一人の一挺一枚。
三味線は撥を使わず爪弾き。柔らかく味のある音色で演奏します。唄も心に思ったことや感じていること、季節の様を独り言を呟くように唄う、粋で垢抜けた爽やかな文句を軽快な邦楽です。「短さ」と「胸に秘めた想いをあからさまに出さない」ところが好き。と仰った。
毎年1月には日頃のお稽古の成果発表を兼ねた演奏会が花吹雪で開かれます。お食事どころ「緑陰亭」がこんな風にコンサート会場に変身。
お弟子さんたちは着物を着つけて、リハーサルにも余念がありません。演奏の途中でも、「やりなおし」お師匠さんから厳しいお言葉も。芸の道は楽しくもあり、厳しくもありですね。
お稽古は毎月、ここ花吹雪で行われます。
お弟子さんのお一人が「東京で暮らしていましたが、一線を退き伊豆へ。まさか、伊豆高原で春日流の第一人者、春日とよ浜栄実 先生にお稽古をつけていただけるとは。奇跡です」お稽古にも熱が入ります。
毎月のお稽古の様子