城ヶ崎の森に降りてきた妖精?赤いうさぎの物語

「伊豆高原の森にもいる
うさぎたちは
わたしたちの魂のかけらだと
思っていただけますか」

というくだりから始まっている花吹雪のオリジナルファンタジア。倶楽部ハウスの壁に不思議なうさぎの絵と散文詩が掲示されているけれど、いったい何だろう。




赤いうさぎは金の花模様がついているのもいれば、赤いあるいは白いうさぎもいる。このうさぎ、随分耳が長いけれど、この画家のタッチかしら?





「その昔、うさぎたちのあるものは
地球をはなれて宇宙の彼方に飛んで行きました
最近、そのうさぎたちは地球に戻り始めています。
地球のそこかしこにいます。
花吹雪の森にもいます。」




どうやら、このうさぎさん達は宇宙からやってきたようですね。森に住む妖精のような存在なのでしょうか。 世界中のさまざまな神話や伝承に登場する「妖精」「精霊」は、森や山、風など自然の中に存在するとされ、人間の世界とは違ったパワーを秘めていて、物語の中では不思議なことが起こります。シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』では妖精のオーベロンとタイターニア、パックが喜劇を巻き起こします。それも夏至の夜、一夜のこと。

赤いうさぎを探しに花吹雪の森へ

「そんなうさぎたちに出逢おうと
長い間地球のあちこちで
眠っていた妖精たちは
むくむくと起き出して来ました。」




倶楽部ハウスの絵画の他にも天井の梁にいる赤いうさぎ。梁に座ったうさぎの目には鳥瞰図のように私たちが映るのかしら。見上げた次の瞬間、こころの中も覗かれそう。とハッとした。私も赤いうさぎに出逢おうと倶楽部ハウスを後に。




宿泊棟にむかう途中の植え込みには、草木に身を隠すように息を潜めている 赤いうさぎが。見つからないようにしているのか、見つけて欲しいのか・・・。

「こんにちは、赤いうさぎさん」
「ようこそ、うさぎの森へ」




「その昔、うさぎたちのあるものは
地球をはなれて宇宙の彼方に飛んで行きました」

もともと地球にいたうさぎ達。どうして地球を離れて宇宙の彼方へ飛んで行ったのかしら。お月様の中でお餅をついているうさぎもそう?
宇宙に行ったうさぎ達は赤いうさぎになるために地球にもどり始めている・・・。
そういえば日本の神話、古事記の「因幡の白兎」白いうさぎが、皮を剥がれて、真赤なうさぎになって、大国主命に癒してもらって元の姿に戻ったお話。




因幡の白うさぎが体を癒したように、黒文字の湯では赤いうさぎと白いうさぎが、たった今、湯船から上がったばかりと大きな石の上ちょこん。まるで何か話しているよう。

「地球上で自分自身と出会い
かけがえのない自分の誠の幸せを
求めるためにやってきたのです
そして赤いうさぎになった瞬間
長い耳がさらに長くなり、
赤い毛並みのなかから
かつて人間が共有した模様が浮かび上がり
月の光を滲ませて光輝くのです」




地球と一体になって自分と出会うことができた白いうさぎは赤いうさぎになれる。 黒文字の湯のうさぎは、赤いうさぎが先にきて自分自身を見つけたうさぎ。白いうさぎはこれから自分と出会ううさぎなのかも。

アイヌの神謡サンパヤテレケ



うさぎ棟には二つのお風呂。「ヒュレヒュレイセポ」「サンパヤテレケ」いずれもアイヌ語だそう。「ヒュレヒュレイセポ」は「赤い赤いうさぎ」の意味。「サンパヤテレケ」は「うさぎが謳った神謡」のこと。兄弟うさぎのお話で、罠にかかってしまった兄うさぎを救うためにうさぎの村へ急ぐ弟うさぎなのだが、途中で兄のことを忘れてしまうという滑稽なお話。





「そう、
たったひとりだけど
孤独じゃあない。
ぼくがぼくと出会うことで
すべての命につながる。
地球の命 宇宙の命
命そのものの中にいる
ぼくの命。
すべての命はぼくの命。
君が楽しければ 何故かぼくも楽しい。」




うさぎたちは、わたしたちの魂のかけらだとしたら、この森に包まれて私たちも、一体になるということなのかも知れない・・・。森には不思議な命の力があるのかも。そんなことを思いながら湯に浸かる秋の夜長のことでした。