翠雨ふる別荘宿で雨やどり
梅雨の長雨と言うけれど、雨の降る様を表す言葉のなんと多いことか。
しとしと
ぽつぽつ
ザアザア
しょぼしょぼ
パラパラ
短い言葉で表現するその様を容易に想像できる。雨の降る様だけでなく、雨の呼び名は400余もあるのだとか。

春に降る「菜種梅雨」「桃花の雨」「小糠雨」
今の季節は「五月雨」「梅雨」「緑雨」
夏の夕立「洗車雨」
秋の「霧雨」「秋黴雨」「秋霖」
冬の冷たい雨は「北時雨」「山茶花時雨」「氷雨」
弱く降る「小雨」「涙雨」あげたらきりがないほど。
微妙な違いを豊かに表現する日本語は、改めて美しいと思う。



霖に森の緑は潤いをましているよう。
リズミカルに葉を叩くパーカッションに今日はどんなメロディを合わせてゆこうか、、、。豊かな森の自然を眺めながらのひととき。



円形に張り出したサンルームのような談話室があるこの部屋は603長七うさぎ。



この部屋は、「実家の両親は東京に、娘たちは東海に」というような家族にも愛用されているそう。
団欒のできる談話室のほかに和室が二つ。



それぞれの家族がリラックスできるような間取りは、さり気ない気配り。



談話室はガラス張りの植物園のようでもあり、
眺めながら身体を左右に傾けてみると、縦に模られた窓のひとつひとつがそれぞれ違う絵のようにも見える。



どこを切り取っても 持って帰りたいほど素敵な1枚。

花吹雪の各部屋には湯茶の準備がしてある。
ホテルなどにあるティパックとは異なり、上質の緑茶の茶葉が桜皮細工の茶筒に入っている。



泊まり客でも気づかないかも知れないおもてなし。

このお茶を美味しく頂くコツ、私流。
部屋の水道からは、天城山系の活水が出るのでそのまま、備え付けのポットで沸かす。



上質の緑茶は、80度程度に冷まして淹れるとその旨味を味わえる。
まず、急須に湯を注ぐ。



その湯を湯飲みに注ぐ。



そうすると、沸騰した湯は80度程度に冷める。
急須の茶こし部分に茶葉を入れ、



湯飲みの湯を1杯ずつ急須に戻し入れる。
このままだと、湯が茶こしを通るだけなので薄い。



茶こしを急須から外して、湯飲みの上に持ち、茶葉の上から急須のお茶を湯飲みに少しずつ順番に均等になるように注ぐ。美しい緑の茶を淹れることができる。


なんとも豊かな味わいだろうか。
日常の忙しさのなかでは、緑茶を急須で淹れることも少なくなったのでは。と思う。

お茶うけとして
チェックインの時に、伽羅蕗の佃煮か和三盆を購入しておくことをお勧めしたい。


梅雨の長雨の何もしたくない時に、こうして何もしないことの贅沢さを味わうのもいい。

七月ばかりに、風のいたう吹きて、雨などさわがしき日、
おほかたいと涼しければ、扇もうち忘れたるに、
汗の香少しかかへたる綿衣の薄きをいとよく引き着て、
昼寝したるこそ、をかしけれ。
                  枕草子 清少納言

雨の日の楽しみ方は平安時代から変わらないのだろうと思いながら、畳の上にごろん。

相方は読書と決め込んだよう。
読もう読もうと思いながら、一向に進まない小説とか、読み返してみたいと思っていたあの本。思いつくままカバンに放り込んで来たのだろう。



お茶のお供にお勧めしたい一品
伽羅蕗・山ごぼう・まい茸



和三盆



太古の海底岩「伊豆石」の湯殿で身体の芯から温まる
梅雨寒に意外と身体は冷えている。足の先が冷たい。湿気が多く汗をかきにくいこの季節はなんとなく不調になりやすいという。
うさぎ棟は地下に貸切風呂があるのが嬉しい。雨でも濡れずに24時間温泉を楽しむことができる。檜と伊豆石の半露天風呂は開放感があって、地下とは思えないほど。森から渡る風が薫る。



ヒュレヒュレイセポの湯サンパヤテレケの湯。ユニークな名前と思いきや、どちらもアイヌ語だそう。
ヒュレヒュレイセポは「赤いうさぎ」の意。サンパヤテレケは「物語を歌に乗せて語る神謡」の意。雨音をBGMに赤いうさぎの神謡はどんな物語になるのか、、、 などと想像しながら湯に浸かる。
じわっとカラダを温めてくれる ミネラル豊かな掛け流しの湯。湯船は伊豆石。伊豆石は太古の時代に火山活動が活発になり海底に火山灰や溶岩が堆積したもので、フィリピンプレートにより地殻変動が起こって伊豆半島が本州に衝突したときの副産物と言われている。太古の海底ミネラルが含まれていることや遠赤外線効果で湯冷めしないのだとか。丈夫な伊豆石は徳川家康の城、「駿府城の石垣」にもなっている。
湯船に浸かりながら、膝の裏をそっと撫で足のむくみをケア。疲れも冷えも湯に溶けていく様なここちよさ。

雨雫が萌黄色の葉に揺れる、雨間の森。
一時の梅雨晴れ。クラッシュゼリーがきらめく涼やかな和菓子のような森は、青時雨。雨上がりの清々しさは雨無くしては得られない別世界。



紫陽花と見間違う甘茶の花。趣きが品良くやさしげ。





甘茶の若葉を蒸して揉んだものは
独特の甘みがあり、それは砂糖の1000倍の甘さがあるとのこと。
花吹雪のチェックインの前にウェルカムティとして淹れてくれる「森のお茶」にもブレンドされている。



6月のお料理は、初夏を感じる涼しげな献立。



夏野菜の炊き合わせ。



この時期だけの希少な地魚あぶらぼうずの西京焼き。
初夏の冷酒と一緒にいただく。



梅雨時だからこそ、ここで過ごしたい。そう思う常宿の滞在。