森林浴と潮風浴が同時に。セラピーロード 「森と海の散歩道」
10連休と長かった今年のゴールデンウィークも終わり、賑わっていた伊豆東海岸も落ち着きを取り戻しているよう。寒暖の差が激しい日々が続いて5月になっても肌寒かったり、梅雨のように雨が続いたり。立夏を過ぎたこの数日、やっと20度を越す晴れやかで心地よい風の吹く新録の季節を迎えた。こんな日は、青空が眩しい新緑の海へ散策コース「森と海の散歩道」の地図を手に出かけてみたい。

城ヶ崎海岸〜吊り橋



宿から約一時間の散策コースは、赤いうさぎの森の脇を抜けて、対島川沿いの遊歩道を海へ。普段歩き慣れていなくてもスニーカーで充分歩ける散策コースの途中には、伊豆高原の四季を感じる自然が隠れている。





木々の合間に見える紺碧は海。時折パッと視界が開けて、果てしなく広がる青。空と海との見分けがつかないほどに眩しい、5月の城ヶ崎ブルーと岩壁に弾ける真っ白な波のコントラストが鮮やかだ。みごとな絶景にため息がひとつ。



森林浴と潮風浴を同時に受けられる癒しの空間は神様の手からこぼれる贈り物。潮の香りのするマイナスイオンを胸いっぱいに吸い込む。


春の海、ひねもす のたりのたりかな 与謝蕪村

岬で伊豆諸島を眺めながらコバルト色の水面を眺めればなんとも長閑な海。温かく柔らかい日差しと風にうとうと としてしまいそう。
そんな時思い出した蕪村の句。海と空の区別がつかないそれとは裏腹に、複雑に入り組みながら切り立つ崖に打ち砕かれる波の激しさ。繰り返す白波の鼓動。





無になって自然と対話する。潮の匂い、頬を伝う風がこころもからだも解していく。究極のネイチャーヒーリングを体験できる。




ずいぶん前のこと、海沿いの知人の別荘でジャズピアニストのウォルタービショップjr夫妻と過ごしていた時、ビシ(ウォルタービショップjrの愛称)が「波の音を聴いていると曲が浮かんでくるんだ」と言っていたことを思い出した。滞在している間に、どんな曲が生まれたのだろう。その曲を聴くチャンスはなかったが、今夜は彼の有名な曲「speak low」(小さな声で話して)でも聴きながら、部屋でグラスでも傾けようか。
(注意:散策は出かける前にトイレを済ませておこう)


日常の忙しなさを癒す、通いなれた晩春の別荘宿

今夜のお部屋は白翁。二間続きのゆったりとした客室。森に面した全面開口の窓。濃淡のグリーンが奥深くまで幾重にも重なって、さっきまでいた自然公園の森にまだいるような錯覚さえ覚える。リスが欅の幹を駆け上がっていくのが見えた。



掛け流しの温泉で汗を流した後、部屋で写した写真を見ながら散策の思い出に浸っていると森から拍子木の音。夜の帳が下りる知らせは、ちょうど18時に打つ。夕暮れ時の湯上りでも、もう足袋がいらないほど暖かい。今夜はどんな山の幸、海の幸に出会えるだろうか。


旬の味を五感で味わう5月らしい八寸。金目鯛の昆布〆粽寿司、鯛子寄せ、
明日葉・木耳・針生姜のせ、穴子の八幡巻き、稚鮎の南蛮漬け、鮑の味噌炊き、空豆の艶煮


ポン酢のジュレがなんとも爽やかな初鰹。



料理長お薦めの春の酒、超辛口の日本酒 魔斬を合わせてみる。ふわっと香る吟醸香を裏切るようなスッキリとしたキレの良さ。辛口酒に感じる舌の刺激感はなく、後味も辛いというより淡麗で無駄のない爽やかさという感じか。


和食の食中酒として楽しむ軽やかな日本酒。



超辛口 魔斬 日本酒度+12




森で採れる香木ヤブニッケイ風味の天城黒豚の香味焼き


【城ヶ崎海岸】
約4000年前に大室山が噴火した時に流れ出した溶岩が波の浸食作用で削られてできた溶岩岩石海岸。約9kmに渡る雄大な絶壁は出入りが激しく幾重にも入り組んだ岩礁。岬から岬へと続く眺めは絶景。ハイキングコースがあり、スニーカーで誰でも楽しめる。中でも長さ48m、高さ23mの「海の吊り橋」は見所のひとつ。
富士箱根伊豆国立公園の指定を受けている。国立公園第1種に指定され、本来の森林の姿に近い貴重な自然遺産が残されている。沖合に黒潮の分流が流れ込むため冬でも暖かく「常春」と言われる気候。照葉樹林の地表層部は厚い腐植層で海に多量の鉄分を供給。そのため豊かな漁場を創っている。
(伊東観光協会 伊東ガイドブックNo1参照)


【国立公園第1種】
特別保護地区に準ずる景観を有し、特別地域のうちでは風致を維持する必要性が最も高い地域であって、現在の景観を極力保護することが必要な地域のこと。