和ハーブ、ヤブニッケイが秘めるパワー
「ハーブ」と聞くとミントやローズマリーなどの西洋ハーブを思い、ハーブティやお料理に使うスパイスとしてのイメージがする。日本の伝統的な自然療法として取り入れられてきた身近にある植物、和ハーブも西洋ハーブと同様に、その香りや薬効が生活の中に溶け込んでいる。

西洋ハーブの歴史
ヨーロッパでは、古代ギリシャのディオスコリデスがまとめた本草書『薬物誌』が1500年以上権威として利用され、教会の薬草園などでハーブが栽培された。各地方に伝わるハーブが治療に利用されその後、医学に取り入れられることとなる。ドイツの修道女ヒルデガルトは「心と身体は一体」であるという考え方に基づいて健康的な生活を提唱。ドイツ自然療法の祖と言われている。料理のスパイスとして、薬草として、またアロマセラピーなど香りが体調を整える効果は今も人気が高い。

和ハーブの歴史
日本では縄文時代に紫蘇や山椒が魚などの防腐剤に利用されていた。と言うから、かれこれ16000年前からということになる。江戸時代には将軍が薬草園を持っていたことが記録に残っている。5世紀に古来中国から渡来した伝統療法「漢方」も薬効を持つ生薬を複数組み合わせ「漢方薬」として治療に使われた。和ハーブも料理、民間薬、治療にと利用されてきた。

身土不二(しんどふに)の考え方
身体と土は二つにあらず。身体と環境は切っても切れないという仏教用語。私たちは食べ物だけでなく、気候、風土、空気、水、光、音など様々なものを取り入れ、またその影響も受けているから、生まれ育った風土が育むものが身体に馴染み、身体に優しい。私たち自身も自然の一部と言ってもいい。

和ハーブ、ヤブニッケイ
香りは自然からの贈り物。爽やかでスパイシーな木の香りのヤブニッケイは、古くから日本に自生するクスノキ科の香木。英名はワイルドシナモン。

「ニッケイ」とは別名「ニッキ」のこと。樹皮が厚いので「肉桂」と呼ばれるようになったそう。ニッケイと言えば、京都の八つ橋やニッキ飴がすぐに浮かぶ。似たような香りの「シナモン」は「セイロンニッキ」のことで、アップルパイやチャイに欠かせない。インドのミックス香辛料ガラムマサラのメインスパイスでもある。
ヤブニッケイの葉は日本原種の唯一のシナモンと言われ、月桂樹(ローリエ)の代わりに香りづけとしても万能。枝ごとお風呂に入れて入浴剤代わりに、焼酎やホワイトリカーにつけて楽しむ。

ニッケイの仲間は多く、クスノキ、ヤブニッケイ、シロダモ、クロモジ、月桂樹(ローリエ)も同じクスノキ科の香木。

ヤブニッケイが秘めるパワーとは
セイロンニッケイやシナニッケイよりも軽い香りのヤブニッケイ。
精油は葉から水蒸気蒸留法で抽出する。量が取れない希少精油。
(ヤブニッケイの精油 5ml¥1650・10ml ¥3300)
筋肉の張りをゆるめて筋肉痛の暖和、免疫力アップ、自律神経の調整にも効果的とのこと。糖尿病予防・改善効果のあるインスリン様成分が、含まれているという研究結果も。ココロにもカラダにも優しい効果がありそう。

花吹雪・うさぎ棟の裏手、森の和ハーブたち
支配人の案内でうさぎ棟から続く小道を通って森へ散策にでかけた。
若い緑の勢いに命の力強さを感じる。
森の住人、山野草が微笑みながら出迎えているよう。
白雪ケシ
山吹
うらしま草

レンギョウ
(実は漢方薬。熱性の疾患や化膿性の皮膚病などに効果)
ニオイすみれ
(咳止めや喉の痛み、気管支炎、口内炎、去痰作用に良いとされる)
野いちご
(ビタミンC、鉄分などを豊富に含む。貧血に効果。根は利尿、整腸作用。果実をつぶして皮膚の炎症、火傷などに用する)

マムシグサ
(生では毒がある。球茎を輪切りにして乾燥させたものが漢方薬の「天南星」で去痰、鎮痛に効果)
りんどう
(消化不良・食欲不振に乾燥させた根茎と根を水で煎じて用いる)
黒文字の林
黒文字
(枝を高級楊枝にする。精油は抗菌・消炎作用、皮膚トラブルの暖和、急性胃腸炎・下痢などにも効果)
ヤブニッケイの林 ヤブニッケイ (日本原種のシナモン。自律神経の調整、糖尿病予防のほかオメガ3を多く含むことから美容効果もあるとされる) ツワブキ (葉は抗菌作用、根茎は健胃。打撲、おできなどの腫れもの、切り傷に生の葉を炙って患部に貼ると良いとされる) 三つ葉 (鎮静作用、食欲増進。貧血、冷え性の改善。リラックス効果) のびる (高血圧、筋肉の麻痺を防ぐ効果。豊富なミネラル成分が骨を丈夫にするという)